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そもそも俺は生きてるんですかね
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「お嬢さま!早くサオを放さないと!
んあっ!

何このエロ漫画


以下チラシの裏


今思えば、あの体育館で遭遇した怪異はビデオだけではなかった。

Nの転勤の後、クラス替えがあり、俺は新しくTとOという友人を得た。
彼らはホラー映画やオカルト、怖い話などに強い興味を持っていた。
Nの話の中で心霊写真探しをしたと語ったが、あんな映像を見たにも関わらず、
俺もまだ、そういったものに無邪気な興味を抱いていた。

七月の始めに百物語をしよう、と言い出したのも俺だった。
ホラー漫画や図書室に置いてあった怪談本、TV番組などに影響を受けたのだろう。
OとYも、以前から興味はあったらしく、俺の提案に喜んで賛成した。

しかし、現実に百物語を始めるには非常に手間がかかる。

蝋燭を百本用意することは子供の経済力では非常に困難だったし、
百話もの怪談、三人で分担するなら約33話ずつの怪談を集める事は面倒だった。
そして何より、百本もの蝋燭を置ける暗い場所、そんな場所を夜中に貸し出してもらうことは、
子供の能力ではまず不可能だった。

俺達はTの家に泊まって、10話程度の小規模な怪談会を開こうか、などと諦めつつあった。

そんな時、思わぬ人物が助け舟を出してきた。クラス委員のMである。
彼は俺達の会話を小耳に挟み、百物語に興味を持ったと言うのだ。

Mのリーダーシップは本物だった。
彼はあっという間に10数人の生徒を集めて見せ、担任教師と校舎の借り出しを交渉した。
更に驚く事に、この百物語に校長が賛同し、体育館の貸し出しが決定した。

結果、担任教師と校長の監督の下、五年生の生徒18名が夜の体育館で百物語を実施するという、
前代未聞の計画が実行される事になる。

提案者である俺達三人は、自分達が事の中心から外れつつある事に少し不満を抱きつつも、
当初、考えていた通りの百物語が実施される事に満足していた。

当日、午後18時。まだ明るかったが、予定通り集まった一同は百物語を開始した。
一人5つずつ、この日のために用意した怪談を話し、蝋燭を吹き消していく。
少しずつ、体育館内も夜の帳に包まれていき、蝋燭の数も減っていった。

だが俺は予想していたほどの恐怖を感じる事ができていなかった。原因は幾つかあった。
まず皆の話す怪談の大半が図書館に置いてある怪談本のものだと分かってしまった事だ。
そして進行するにつれ、同じような話が目立つようになり、ネタが無いという生徒もいた。

一番致命的な問題は期待していた担任教師と、校長の話がイマイチだった事だ。
彼らは子供向けの配慮のつもりか、恐怖度の低い話ばかりをしていた。
それはホラー映画などを愛好していた俺たち三人組のみならず、他の生徒達も退屈らしかった。

伝承どおりならば百話目が終わり、最後の蝋燭が消えて周りが闇に包まれた瞬間、
恐ろしい怪奇現象が起こるというが、こんなグダグダな状況では期待できなかった。

しかし、俺には一つ、切り札があった。ポケットに隠し持っていたかんしゃく弾である。
館内が暗くなった瞬間、床に叩きつけて、参加者全員の度肝を抜こうと考えていたのだ。
その為、最初の提案者として俺は百話目を話す権利を得ていた。

99話目、校長の話は戦争中、防空壕の中で幽霊に遭遇したという話だった。
さすがにそこそこ怖い話を持ってきたようだったが、場の冷めた雰囲気は拭い去れなかった。
だが、もはや灯りは僅かで、一同は寄り添うように蝋燭の周りに集まっていた。

そして、俺の出番が来た。俺が百話目に選んだのはNの撮ったビデオの話だった。
勝算はあった。俺にとって一番恐ろしく、生々しい怪奇体験であったし、
何より、それが起こったのは自分達が今いる体育館だった。俺自身、怖かったくらいだ。

予想通り、皆の反応は良かった。
黒いものが浮かんでいた場所を指差して見せると、悲鳴を上げる生徒すらいた。
当初の予定通り、皆はすっかりおびえきった不安げな表情を見せていた。
俺は話を終えると、ポケットに手を入れ、その手の中のかんしゃく弾を握り締めて、
最後の蝋燭の日を吹き消した。陽は落ちきっていたらしく、館内は真っ暗になった。

突然、体育館中、いや学校中に、校内放送を告げるベルが鳴り響いた。
一同を驚かすはずだった俺は、心臓が停まらんばかりの衝撃を受け、息を漏らした。
勿論、驚いたのは俺だけではなかったようで、生徒達、そして担任と校長の悲鳴が聞こえた。
暗中で何処かへと逃げ出そうとして、転んで倒れている者も居るらしかった。

スピーカーからは凄まじいハウリング音、続いて喘ぐような、激しい呼吸音が響き始めた。
咳き込む声が続き、苦しげなうめき声が十秒ほど続き、突然音が絶えた。

死んだ、音が絶えた瞬間、俺は何故かそう思った。

しばらくして、放送の終了を告げるベルが鳴った。

校長が懐中電灯を点けた。途端にあちこちに逃げ惑っていた生徒達が集まりだす。
だが、目と耳を塞いで座り込み、動く事を拒否する女子もいた。
同じく懐中電灯を持った担任が配電盤へと走って行き、灯りがついた。

時計は十時を指していた。予定より遅い時間だった。
「今日は早く帰りましょう」という校長の提案に従わない者は無かった。誰もが怯えきっていた。

恐らく、俺が一番怯えていた。面白半分で”あれ”を呼び出したのは俺だ。
家に帰っても、ついてきて、夜中に襲われるかもしれない。
そんな、悪夢のような妄想が脳裏から離れなかった。

その後、何度か担任に聞いてみたが、担任も校長も、あんな仕掛けはしていないと言う。
20歳になった今年の二月、同窓会に現われた担任に、俺はまた尋ねたが、
「自分も校長もあんな仕掛けはしていない。ところでビデオの事は本当なのか?」
などと逆に聞き返されたほどである。

俺達の後、二度と百物語が開催される事はなかったらしい。
あんなに百物語に乗り気だった校長はまるで人が変わったようになり、
在任期間中、林間学校の伝統行事である、肝試しを禁止したそうだ。

そんな彼ももう亡くなったという。

その夏、俺とT、Oの三人組は怖い話やオカルトには二度と関わらない事を決めた。、

だが数ヶ月後、俺は体育館で最後の怪異に遭遇する事になる。

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